前項:医療機器マーケッターに聞く コロナ禍で変わるセールス・マーケティング手法 ① ~コロナ禍における新製品launch経験~ から続く
片岡:これまでの話からも感じますが、これから営業に求められるものも大きく変わりますよね。
Tさん:対面で強みを発揮していた人にとっては厳しい環境かもしれませんね。一方でそんな中でも売り上げを伸ばし続けている営業はいます。
片岡:数字を伸ばしている営業はどういうアプローチをしているのですか。アナログですが結構手紙を書いている営業もいると聞きましたが。
Tさん:手紙を書いている営業は弊社にもいますね。特にこれまで会ったことがないドクターにはいきなりメールを送るということも失礼ということで、まずは手紙を送り、セミナーなどで会えた時に自己紹介をすると 「あ、手紙くれていた方だね!」 という話になり、 その時にはもう相当なインパクトを顧客に与えているというわけです。
片岡:手紙は一例だと思いますが、やはり工夫していかに接触回数を増やすかということですね。
Tさん:そうです。まずはそこが重要だと思います。
片岡:以前他のベテラン営業の方とお話をさせて頂いた時に、コロナ禍で訪問回数が制限される中、数少ない訪問機会を効果的に活用できるベテラン営業の存在意義が高まるのではないか、というお話があったのですがどう思われますか?
Tさん:もちろんこれまで構築した医師との関係性や経験により、少ない訪問頻度でも大きなインパクト与えるということはあると思います。一方でベテラン、若手に限らず言えることかもしれませんが、訪問という手段がなくなると、経験が邪魔をして「あまりメールを送ったら失礼かな」とか、「手紙なんて意味がない」とか考えているうちにどんどん顧客との接触回数が減り、売上が落ちてしまうということもあるように思います。
片岡:やはり活動量は重要ですね。
Tさん:対面であろうがなかろうが、「どうにかして顧客と接触しようとする姿勢」があるかどうか、ですかね。どんなに素晴らしい考えを持っていても伝えることができなければ効果はゼロなんですよね。
片岡:今は横一列で顧客に接触しにくい、という状況なので、抜きんでれば勝つチャンスも大きいという状況ですね。ただ、どういう顧客に対して活動量を上げるかも重要ですね。
Tさん:確かに。売れている営業は顧客の状況によって営業スタイルを変えているというか、例えば製品を採用してもらった施設には、フォロースタイルの営業に切り替えて、次の見込み顧客に軸足を移す、ということをきっちり行っています。
片岡:昔から言われますが、売れない営業は、採用してもらったら居心地が良くなってそこに居座ってしまうという・・・。話は変わりますが、先ほどベテラン営業についての話をが出ましたが、先入観のない若手営業の方が有利なのでしょうか?
Tさん:デジタルリテラシーは若い人の方が高いと感じますし、対人スキルや知識という点はベテランに一日の長があると思いますね。
コロナ禍で我々を取り巻く環境が急速に変化していますが、デジタルに限らず、こういったことがきっかけになって新たな手法が生まれてくるのだと思います。
デジタルに関しても、若手、ベテランそれぞれメリットのある形で活用してはどうかと思います。若手にとっては、知識経験のなさをデジタルを活用することで補うことができると思いますし、ベテランにとっては対面のみならず知識や経験を活かす機会を自ら創出できると思います。
片岡:具体的には?
Tさん:Web面談を例にとってみると、若手は、先輩やマネージャー・本社の人間と同行する機会を簡単に作れるようになり、より質の高い面談ができるのではないでしょうか。
ベテランは後輩からデジタル活用術を学べる機会にもなりますし、対面で発揮してきた能力をWEBで発揮できればより効率的・効果的に顧客にアプローチできるようになると思います。
いずれにしろ、新たな手法を身に着けるためには、自身の強み弱みを認識したうえで、これまで以上に他者を巻き込む力が求められるのかもしれません。
片岡:確かに。実際にマーケティングが地方で日帰り同行するとなると1日に2-3件くらいしか回れないですが、Webだと全国各地で1日5件以上同行訪問することだって十分に可能ですね。
Tさん:そうですね
片岡:マーケティングに関してはどうでしょう?今までとは違ったどういう能力が求められるでしょうか?
Tさん:いうまでもなくデジタルマーケティングのリテラシーですかね。顧客にアプローチする手段が非常に狭まっているので、WEB講演会やデジタルコンテンツがこれまでのアプロ―チ手法に変わるものになってくると思いますので。
片岡:そうですよね。弊社でもコロナ禍以降デジタルマーケティングポジションの依頼が急激に増えましたね。ただ、デジタルマーケティングの経験豊富な方が採用できない間は、自分たちで行わないといいけないですものね?
Tさん:デジタルとなるとこれまでとは考え方、手法を変えなければならないこともあり面食らうことが多いですし、社内の体制も整っていないなかで進めることになるため一つ一つの作業に時間がかかりました。環境変化に合わせて、改善されていくとは思いますが。
片岡:やはりマーケティング部門の中でも、デジタル化について行けない方もいるのでしょうか?
Tさん:ついていけないというよりは、未経験のため懐疑的という人はいると思います。しかし、コロナをきっかけとして、営業の武器であった訪問が制限されてしまった以上、マーケティングとしてはそれを補うためにも 「どうやって顧客と接触するか」 という視点を持つことは非常に重要になってくると思いますし、そこにデジタルリテラシーはやはり必須となると思いますね。
片岡:マーケティングにおいても「顧客とどうやって接触するか」という視点が必要になったと。非常に面白いですね。今回は興味深いお話をありがとうございました。またぜひ聞かせてください。
Tさん:ありがとうございました。