著名医師に聞く。「不整脈アブレーション治療の現状と展望」千葉大学病院循環器内科 准教授(副診療科長) 近藤祐介 先生
2025/04/24
2025/04/24
目次
Interviewee: 近藤 祐介 先生
千葉大学大学院医学研究院 循環器内科学 准教授
千葉大学大学院医学部付属病院 循環器内科 副科長
略歴:
2006年 3月 北里大学医学部 卒業
2010年 4月 千葉大学医学部附属病院 循環器内科 医員
2013年10月 University of Bonn, Department of Medicine-Cardiology, Clinical Fellow
2022年 4月 千葉大学大学院医学研究院 循環器内科学 准教授
千葉大学医学部附属病院 循環器内科 副科長
現在に至る
主たる学術認定医・専門医等:
日本循環器学会(循環器専門医), 日本不整脈心電学会(認定不整脈専門医)
学会活動等:
日本循環器学会 FCS(特別正会員、総務幹事、代議員、評議員
日本不整脈心電学会 評議員、WCDステートメント改訂ワーキンググループ委員会委員、植え込み型デバイス委員会委員(登録評価部会員、左心耳閉鎖デバイス部会員)
日本心臓病学会(FJCC(上級臨床医)、代議員)
著名な先生方に、医療機器業界での転職に有用なトピックについて語っていただく、「著名医師に聞く」。 今回は、千葉大学大学院医学研究院 循環器内科学 准教授(副診療科長)、近藤祐介先生に、「不整脈アブレーション治療の現状と展望」をテーマにお話を伺いました。
インタビュアーのシニアコンサルタント篠崎は、医療機器メーカーで関東営業部長として在職中、近藤先生にお世話になっておりました。
近藤先生:篠崎さん、在職中はこちらもお世話になりました。お元気そうですね。
今日はこの様な場に呼んで頂きありがとうございます。
心電図の知識のなさを痛感したことをきっかけに不整脈治療の道へ。留学先であるドイツでは企業と密接に協力し研究を行った
近藤先生:大学を卒業後、千葉大学 循環器内科に入局しました。実は脳神経系にも興味があり将来はそちらに進もうかとも考えていたのですが、当時の循環器内科の教授が基礎研究から臨床研究へつなぐいわゆるトランスレーションナルリサーチをやっていて、基礎研究が実用化へ至るまでに関わっているのを見て循環器の可能性を感じ、現在に至ります。
入局後の2年間は関連病院で虚血性心疾患に携わることが多かったのですが、心電図の奥の深さと自分の知識の浅さを痛感しました。大学院では、心電図を学ぼうと思い、不整脈治療の道に入りました。
その後留学したドイツでは、企業と医師が協力した新しいデバイスの研究・開発が活発でした。各企業の開発室が大学内に設置されており、ディスカッションの機会が豊富で、企業と研究者双方から、開発の意図や製品の細かな特性などについて学べる環境が整っていました。臨床が終わった後、18時から企業の研究者と実験を行うこともありましたね。
当時、篠崎さんがいたバイオトロニック社関連でいうと、“ゴールドチップカテーテル“(熱伝導を高めるためゴールドチップが付いたアブレーションカテーテル)がヨーロッパなどで積極的に試されており、私もそれを用いた研究に取り組んでいました。
また、植込み型デバイス関連では、例えば、ICD(植込み型除細動器)に関連するVFワンゾーン(心室細動を検知する方法)の試作デバイスを用いた研究や、リードレスペースメーカの開発のための動物実験も多く行われていました。とにかくドイツでは本当に活発に製品開発が産学共同で行われていて、毎日が充実していました。
近藤先生:そうです。臨床ももちろん大事ですが、日本でも新たなものを生み出したいという思いがあり、現在の法人を立ち上げました。
私が代表理事を務める『一般社団法人 千葉心電学研究会(通称:エレカル)』 は、非営利の学術団体で、心臓病の予防と治療の向上を目指す医療関係者および企業との交流の場であると同時に、研究・開発・教育・啓蒙活動を通じて千葉県民の健康増進に貢献することを使命としています。
定期的に、公開講座やセミナーを開催し、医療従事者だけでなく県議会議員などとも協力して情報の発信をしています。結構力をいれてホームページを作っているので。ぜひご覧ください(https://www.chiba-shinden.or.jp/)。
症例数の増加が著しい不整脈アブレーション治療で注目される「Pulsed Field Ablation」
近藤先生:現在の不整脈アブレーションの状況ですが、ここ数年で症例数が毎年、平均10%程度伸びています。これは世界、国内の市場ともにです。
中でも心房細動のアブレーションが約70%、350例程度、2回目以降の症例が120例程度含まれます。その他は発作性上室性頻拍、心室頻拍などが約30%、150例程度となっています。
近藤先生:大きなトピックとして、世界中で注目されているPulsed Field Ablation(パルスフィールドアブレーション:以下PFA)が、2024年11月からようやく本邦の市場にも出てきました。従来の熱を使用したRFA(高周波通電アブレーション法)に対して、PFAは短時間の周期(パルス)にて電界(パルスフィールド)を発生させて細胞膜に小さな穴をあける新たな治療法です。
PFAはゲームチェンジャーとなっており、かなり各社が力を入れていると感じます。30分から1時間+α程度で安全に手技を終える事が出来、患者様の負担軽減、合併症のリスク低減、再発率の低減など様々な面で利点があります。
心房細動治療でいうと、RFAが50%、PFAが50%となり、PFAの出現によりクライオ(冷凍)アブレーションはほぼなくなりました。また麻酔を除く手術時間は、当施設では、RFAが約1時間半から2時間、PFAが30分から1時間となっていますので、手術予約待ち患者さんの低減という課題の解決にも貢献が期待されています。
近藤先生:PAF(発作性心房細動)の治療では、PFAがRFAをほぼ置き換えつつあります。例えば、ある国内有数の施設ではもうPAFではRFAを使用していないほどです。
海外の例を出すと、ロサンゼルスでは、アブレーション症例の9割がPFAになっていると友人の医師から聞きました。日本でも今後1年以内に発作性AFの治療の多くがPFAに移行すると予想されます。ただし、持続性AFについてはまだRFAが主流ですね。
近藤先生:個人的な見解ですが、少なくとも全体の7割はPFAになるでしょう。RFAは持続性AFや特殊な症例で残るかもしれませんが、クライオなどのバルーンテクノロジーなど他の治療法は減少傾向となりそうです。
また、PRAの普及に伴い、広範囲をカバーするPFAとピンポイントで対応できるRFAを組み合わせたハイブリッド治療法は、今後重要となると考えられます。
医療機器の担当者に必要なのは、患者さんに最高の医療を提供する姿勢
近藤先生:最も重要なのは、患者さんに最高の医療を提供する姿勢を持つことだと思っています。我々が日々接する営業担当者に対しては、医師や患者さんから信頼を得られる正直さ、誠実さを求めます。
この業界では長期的な信頼関係が非常に大事ですからね。また、私たち医師と一緒に日本から新しい治療法やその臨床データなどを発信していく!!という熱い気持ちをもった医療機器メーカーの人が多く出てくることを期待したいです。
近藤先生:篠崎さんが当時、病院に来るたびに私はプレッシャーを受けていましたよ(笑)
近藤先生:症例数は現在伸び続けていますが、最終的には停滞、減少する可能性もあると思います。理由として、日本の医療財政の厳しさや技術の進歩による治療の効率化があります。
とはいえ、これは他の多くの治療にも言えることだと思いますので悲観する事ではありませんし、不整脈治療における技術革新の余地はまだ大きく、PFAを含む新しいデバイスや治療法が次々と登場するでしょう。
私はこの領域はまだまだ多くの可能性があると思って期待しています。
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