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日本では前立腺がんの患者さんが年々増えており、2022年には新たに診断された人が10万人を超えました。これは男性にとって最も多いがんで、今後も高齢化の進展や検診の普及に伴い増えていくと予測されています。前立腺がんは比較的進行がゆるやかで、早期に見つかれば治療の選択肢も広いがんですが、放射線治療を行うときに問題になるのが直腸への副作用です。前立腺と直腸は解剖学的に非常に近いため、放射線がどうしても直腸にあたり、下痢や出血といった症状につながることがあります。治療の成績が良くなってきている今だからこそ、「いかに副作用を減らして患者さんの生活の質(QOL)を守るか」が大きなテーマになっています。
ボストン・サイエンティフィック社の取り組み
この課題に最初に応えたのが、ボストン・サイエンティフィック社の 「SpaceOAR™」 です。2018年に日本で承認・保険適用となり、すでに多くの医療機関で使われています。素材はPEGというハイドロゲルで、前立腺と直腸の間にゲルを注入して空間を作る仕組みです。臨床データでは、直腸に届く放射線を大幅に減らし、腸機能を治療後ベースラインの90%以上の維持が示されました。(*同社HPより)保険が使えるので患者さんの費用負担も抑えられ、広がりやすかったという背景もあります。日本における直腸スペーサーのスタンダードを築いた製品だと言えると思います。
*参考リンク
https://www.prostatecancer-jp.com/treatment/radiation-therapy.html
テレフレックス社の新しい選択肢

そして2025年には、テレフレックス社が 「Barrigel™直腸スペーサー」 を日本で発売しました。こちらはヒアルロン酸をベースにした世界初の成形可能タイプで、注入の際に形や配置を調整できるのが特長です。米国の臨床試験では、ほとんどの患者さんで直腸の被曝が25%以上減少し、さらに副作用の発生率も低くなるというデータが出ています。すでにあるSpaceOAR™に加えて、新しいBarrigel™が登場したことで、医療現場には複数の選択肢ができました。患者さんの状態や医師の方針に合わせて選べる環境が整い始めているのは大きな前進であると考えます。
まとめ
日本の前立腺がん治療は、患者数の増加とともに「治すだけでなく、その先にいかに快適に暮らせるか」も問われる時代に入っています。2018年からのSpaceOAR™、そして2025年からのBarrigel™と、直腸スペーサーという新しい技術が日本で定着し始めました。競合製品が揃うことで市場は活性化し、結果的に患者さんにより良い選択肢が届くことになります。これは医療現場だけでなく、関連するビジネスや人材の領域にも新しい可能性を広げる動きです。前立腺がん治療のスタンダードが変わりつつある今、医療の未来を考える上で注目すべき大きな一歩だと感じます。
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