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著名医師に聞く:脳血管内治療の最前線-その進化、課題と医療機器メーカーへの期待- 帝京大学医学部部附属病院 脳神経外科教授 庄島正明 先生

2026/02/19

2026/02/20

目次

脳血管内治療は、この四半世紀で大きな変革を遂げ、かつては開頭手術が主流だった領域において、低侵襲で精度の高い治療が標準となりました。
その進化の背景には、現場医師の挑戦とともに、医療機器メーカーによるデバイス開発があります。マイクロカテーテルの誕生から電気離脱式コイル、血栓回収デバイス、フローダイバーターの登場など、技術革新は治療体系そのものを塗り替えてきました。今日では、医師の治療精度は医療機器の性能と密接に結びつき、医療機器メーカー社員は治療現場を支える重要なパートナーとなっています。

本インタビューでは、黎明期から最前線を歩む、帝京大学医学部部附属病院 脳神経外科教授 庄島正明先生に、治療の進化とともに、医師がメーカーに求める姿勢や期待について伺います。

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庄島正明先生

略歴:
1996年 東京大学医学部卒業。
東大病院、埼玉医大病院、亀田総合病院、東京警察病院、NTT東日本関東病院等で研修
2003年 東京大学生産技術研究所(大島研究室)にて研究
2005年 自治医科大学付属病院 血管内治療部 助教
2009年 東京大学医学部附属病院 脳神経外科 助教
2013年 同 特任講師
2017年 埼玉医科大学総合医療センター 脳神経外科 教授
2021年 帝京大学医学部附属病院 脳神経外科 教授
2022年  同 脳卒中センター長兼任 現在に至る

所属学会:
日本脳神経血管内治療学会(JSNET)関東地方会 幹事
日本バイオレオロジー学会 理事
日本脳卒中学会 代議員
スパズムシンポジウム 世話人

資格:
日本脳神経血管内治療学会 専門医・指導医
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医・指導医
全日本病院協会 臨床研修指導医

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井口:庄島先生、お久しぶりです。本日は宜しくお願いいたします。
庄島先生:本当にそうですね。1999年頃に警察病院でご一緒した頃が思い出されます。

井口:早速ですが、まずは脳血管内治療の歴史について教えていただけますでしょうか。
庄島先生:脳血管内治療は1970年代に一部のパイオニアによって始まりましたが、当初は治療器具が未発達で、十分な治療効果は得られていませんでした。1980年代に、しなやかさと丈夫さを併せ持つマイクロカテーテルが登場したことで、安定して脳血管にアクセスできるようになり、本治療の可能性が大きく広がりました。

井口:現在の治療機器の発展はこの頃からなのですね。

コイル。太さは約250µmだが、約30µmの細い金属繊維がバネ状になっており、細い糸と同じくらいに柔らかい。使用する用途に合わせて、直径1mm〜20mmのカールが付けられている。

庄島先生:はい。特に1990年代に、Guido Guglielmi医師が電気離脱式コイルを開発したことが大きな転機でした。従来は留置し直すことができなかったコイルが、切り離すまで何度も調整可能となり、治療精度が飛躍的に向上したのです。
これにより、開頭術が必要だった脳動脈瘤が、低侵襲なカテーテル治療で治せるようになり、脳神経外科の治療体系が大きく変わりました。

2000年代に入ると、治療デバイスの進化も加速し、頸動脈ステントや血栓回収デバイスなどが次々と登場しました。これらの有効性がデータで示されたことで、脳血管内治療は急速に普及していきました。また、2001年から日本脳神

経血管内治療学会としても、専門医制度が発足し、現在までに2500人弱の専門医が認定されていて、日本全国の医療機関で、高水準の脳血管内治療を提供できるまでに発展してきました。

脳血管内治療で使用される血管撮影装置

現在、脳血管内治療に関連する治療器具や治療手技には、世界でも高い診療報酬が設定されているためか、投資と開発が積極的に行われていると感じています。

井口:現在の症例数や開頭と血管内治療の割合について教えてください。
庄島先生:年間2万5千件ほどの血管内治療が行われていて、脳動脈瘤の治療では、従来の外科手術を超え、血管内治療が6割程度となっています。さらに、血管内治療の割合は年々増加しています。

井口:技術的な進歩や治療器具の進化についても教えてください。
庄島先生:2000年代に入り、さまざまな治療器具が大きく進歩しました。それまで脳血管へカテーテルを誘導するだけでも高度な技術が必要でしたが、安全かつ安定して行えるようになりました。また、血管を拡張・閉塞するための金属製ステントなどのデバイスも、細く柔らかく進化し、脳血管内へ安全に誘導できるようになりました。これは、従来の硬く太い治療器具からの大きな変化です。

さらに、従来は血管を広げる目的だったステントに加え、網目構造により血流を変化させて病変を治療するという、新しい発想のフローダイバーターも登場しました。

フローダイバーター(写真左)。約30µmの金属繊維を48本用いて編み込まれた筒状の治療器具。動脈瘤の入口を横切るように留置し、動脈瘤内に入り込む血流の勢いが弱まると、半年〜1年かけて動脈瘤が縮小して最終的にはなくなってしまう。

井口:今後の課題はありますか?
庄島先生:治療器具の進化により、だれでも簡単に脳血管内治療を行える様になりました。一方で、医師ひとりひとりが経験できる症例数が減ったのと、医療施設毎での教育環境の格差も課題です。
限られた熟達したDr.のみが治療していた当時と違い、今後は、より多くの患者さんがトラブルなく、安全な治療を受けられるようなクオリティコントロールの体制づくりが必要と思います。

井口:脳血管内治療において、庄島先生が心がけていることがあれば教えていただけますか?
庄島先生:低侵襲のカテーテル治療は基本的にはうまくいきますが、一方でトラブルが起きた時には被害が大きくなるケースが有ります。その為、毎回、術前に撮像した画像を3Dワークステーションで眺めながら、頭の中で何度も治療を行って、実際の治療に臨んでいます。

井口:若手医師への指導についてはどうされていますか?
庄島先生:現在のデバイスは本当に進歩が著しく、ちょっと体外で練習すれば、磨き上げられたスキルがなくても、治療をうまく行えることがほとんどです。
ただ、先にも述べましたが低侵襲治療では血管に障害を与えると大きなトラブルにつながる為、予防策としてカテーテル室内に複数のリモートコントロールのビデオカメラを配置して、若手の目線や手先の動きをモニタリングしながら、教育を実施しています。

井口:脳血管内治療分野で事業展開する代表的なメーカー名を教えていただけますか。
庄島先生:井口さんがいらっしゃったボストン:サイエンティフィック社では現在も頸動脈ステントの販売をされていますね。外資系メーカーでは日本ストライカー社、日本メドトロニック社、ジョンソン・エンド・ジョンソン社、クック社などの海外メーカーがあり、国内メーカーとしては、テルモ社、ニプロ社、朝日インテック社、カネカ社、日本ライフライン社などとなります。(順不同)

井口:基本的には25年前と多くは変わらない印象ですが、塞栓コイルの取り扱いメーカーが増加し、フローダイバーターや血栓回収の機器などにも多くのメーカーが参入していますね。
庄島先生:そうですね、ここでは各社のシェアなどは割愛しますが。、メーカーの方々も、3社くらい移り変わっていたり、数十年前から一貫して同じところで働いていたりと様々ですね。

井口:医療機器メーカーの方々との関わりについて教えていただけますか?

緊急時用の脳血管内治療デバイス病院在庫

島先生:症例の際には、どのようなメーカーのどのような治療器具を使って治療を進めるかは予めプランニングを済ませています。それでも、現場での微調整が必要で、その際に、現場にいらっしゃる営業の方とお話しをしながら、チューニングすることが多いです。
それ以外には、月に数回、営業ではなく、マーケティングの方から、新製品の情報提供や、逆に製品に関する聞き取り調査などの訪問を受ける事があります。

実際の現場では、若手医師への症例のサポート、情報提供が主で、他新製品や自分が使っていない製品について情報提供を受けることもあります。

井口:脳血管内治療機器を扱うメーカーに、未経験の営業の方が入る場合、先生から見た印象はいかがでしょうか。
庄島先生:脳血管内治療機器の営業では、病院だけでなく医師や放射線技師など多方面への配慮が必要なため、医療業界での経験があれば多少有利だと思います。

しかし、この分野では新しい治療器具や概念が次々に登場するため、これまでの経験よりも、新しい情報を収集し整理する力の方が重要だと感じます。また、未経験の方でも短期間で多くの症例に立ち会う機会があり、その知見を若手・中堅の医師と共有して信頼関係を築くことができれば、営業成績にもつながるでしょう。その点では、未経験者の方がかえって上手くいく場合もあると思います。

井口:メーカーで働く方々に求める役割や、期待していることはありますか?
庄島先生:若手の頃は、メーカーの方から正確な情報や資料、ハンズオンの機会を提供していただくことが大きな助けになっていました。また、複数施設で多くの症例に立ち会っている営業の方の中には、医師以上にカテーテル治療の実際に詳しい方もおり、中堅時代にはそうした方々とのやり取りが自身の成長につながったと感じています。

現在では、営業だけでなくマーケティング部門の方から、パンフレット以上に踏み込んだ治療器具の情報を得たり、学会や研究会で意見交換できる機会が、治療レベルの向上につながっています。職種は違っても、同じカテーテル治療に関わる者同士として、互いに研鑽できる関係を期待しています。

井口:メーカーに会社として期待することはありますか?

庄島先生:製品に不具合が生じた際には、できるだけ早く情報を共有し、どのようなトラブルだったのかを明確に伝えてほしいと思います。
 
また、医療機器開発では海外に及ばない面もありますが、日本の現場の声を生かすことで、製品開発に限らず、日本発のサービスやサポートを形にできるのではないかと期待しています。

 

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