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~「血流を取り戻す医療」の歴史と新たな治療選択肢の登場~
2026年7月、BDグループのメディコンより、国内初となる破砕・吸引一体型血栓除去デバイス「Rotarex™ エンドバスキュラーシステム」の薬事承認取得が発表されました。本製品は、カテーテル先端の回転機構と吸引機構を組み合わせることで、血栓の破砕と除去を同時に行う血栓除去デバイスであり、下肢動脈の血栓性病変に対する新たな治療選択肢として期待されています。また、欧州では1999年のCEマーク取得以来、25年以上にわたり使用されてきた実績があります。
末梢血管治療という言葉は、循環器や血管領域に携わらない方にとっては馴染みが薄いかもしれません。しかし、高齢化や糖尿病患者の増加に伴い、閉塞性動脈硬化症(PAD)は年々重要性が高まっている疾患の一つです。足の血管が動脈硬化によって狭窄・閉塞し、進行すると歩行障害や重症虚血を引き起こし、最悪の場合には下肢切断につながることもあります。
末梢血管治療の歴史を振り返ると、その本質は「いかに低侵襲に血流を再開させるか」の追求でした。かつては外科的バイパス手術が中心でしたが、1990年代に入るとカテーテルを用いた血管内治療(EVT)が急速に発展します。特に腸骨動脈領域では、1990年代半ば以降にPalmaz Stent(パルマッツステント)での治療が導入され、従来は外科手術が主体であった症例にも低侵襲な治療が可能となりました。現在では腸骨動脈病変に対するEVTは標準的な治療として定着しています。
実は私自身も、2000年代初頭にボストン・サイエンティフィック ジャパンに在籍し、当時の代表的な腸骨動脈用自己拡張型ステントであったWallstent(Easy Wallstent)の販売に携わっていました。現在では腸骨動脈やさらに末梢血管のEVTは当たり前の治療となっていますが、当日は、デバイスの進化と共に発展する治療コンセプトそのものが大きな変革でした。医師の先生方とともに新しい治療法の普及に取り組んだ経験は、今でも強く印象に残っています。
その後、末梢血管領域ではステント技術の進化に加え、薬剤コーティングバルーン(DCB)、ステントグラフト、アテレクトミーデバイスなど、多様なデバイスが登場しました。一方で、血栓を伴う病変の治療は依然として難易度の高い領域です。血栓による急性閉塞では迅速な血流再建が求められる一方で、治療中の末梢塞栓などにも注意が必要となります。

今回承認されたRotarex™は、そのような課題に対する新たなアプローチとして注目されています。回転機構による破砕と吸引機構による除去を同時に行うことで、急性期の血栓のみならず器質化した病変への対応も期待されています。末梢血管治療の歴史を振り返ると、バルーン、ステント、DCBへと進化してきた流れの先に、血栓除去デバイスという新たな選択肢が加わることになります。
医療機器業界を専門とする立場から見ると、今回のニュースは単なる新製品承認ではありません。新しい技術が真に価値を発揮するためには、臨床エビデンスの蓄積、適正使用のための教育、施設導入支援、市場形成など、多くの活動が必要になります。研究開発、薬事、マーケティング、営業、クリニカルスペシャリストなど、多くの職種の連携によって初めて治療が社会実装され患者様のQOL向上に寄与していきます。
Rotarex™の承認は、末梢血管領域における技術革新であると同時に、医療機器業界が患者さんへ新たな価値を届け続けていることを象徴するニュースだと感じています。今後、この技術が日本の臨床現場でどのような成果を生み出し、患者さんのQOL向上に貢献していくのか注目したいと思います。
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