Interviewee:
Integra Japan株式会社
取締役 日本支社長 遠藤耕平 様
大学は美術を専攻し、卒業後はヘルスケア企業を支援するコンサルティング会社に就職。MBA取得を経て30歳で大手外資系医療機器メーカーに入社。同社で営業、マーケティング、マーケティングマネジャーを経験したのち、35歳でIntegra Japanの立ち上げに一人目の社員として入社。以降、日本支社長として組織のゼロからの立ち上げ、コッドマン買収におけるビジネス統合をリードし現在に至る。
Integraは再生医療で始まり、世界に先駆けてその治療化に成功
遠藤様:松本さん、こちらこそよろしくお願い致します。
松本:まず第1回目である今回のインタビューでは、本体であるIntegra LifeSciencesおよびIntegra Japanそれぞれの沿革や概要説明を中心にお伺いできればと思っております。
早速ですが、まずIntegra LifeSciencesは、そもそもコラーゲンを使った再生医療製品のパイオニア的存在とお聞きしました。そのあたりからお話頂けますでしょうか。
遠藤様:最初から非常に重要なポイントをご指摘頂きました。Integra LifeSciences創業のきっかけは再生医療であり、1989年にアメリカで、コラーゲンを利用して人間の皮膚の真皮層を再生する製品を開発したことでした。
そして、その製品はFDAがアメリカの歴史上初めて薬事承認を出した再生医療の製品となったのです。
ですので、再生医療の元祖、再生医療で世界に先駆けて治療化に成功した会社がIntegra LifeSciencesと言っても過言ではありません。
コラーゲンは、皮膚、骨、臓器、血管など人体に広く分布しています。人の真皮層が再生できるのであれば、硬膜も神経も再生できるということで製品と事業を拡大してきました。
遠藤様:その通りです。コラーゲン技術においてはプラットフォームといいますか、世界的に見てもイノベーティブかつ基礎的なところも押さえている企業、と言っていいと思います。
遠藤様:まずIntegra LifeSciencesは、いわゆるコッドマン スペシャルティ サージカルと呼ばれる外科系のカンパニーと、ティシューテクノロジー、いわゆる再生医療のカンパニーに分かれています。この中で再生医療のカンパニーには様々な創傷治癒や再建手術用製品や神経の修復のための製品など15品目程度あるのですが、日本市場にはまだ 、コラーゲン使用吸収性人工硬膜と人工真皮の2品目しか導入されていないんですよ。
遠藤様:そういう方向性です。
Codman®ブランド、セールスチャネルとIntegra製品のシナジー
遠藤様:一番の目的は、欧米以外のビジネス、つまりは日本や中国などの成長を加速させるためでした。
当時を振り返ると、Integraは欧米では独自で製品を売るための確立したブランド、チャネルを持っていました。対してIntegra Japanの営業はたったの5人。中国も同様です。この状態で吸収性のコラーゲン使用吸収性人工硬膜や、超音波手術器等の魅力的な製品を市場導入しても、充分に全国の病院をカバーできないというジレンマがありました。
かたやコッドマンは以前の会社の中でも 非常に歴史のある事業で、日本でも中国でも確立した組織とセールスチャネルがありました。
ただ、前社の組織体制ではは事業部の数も多いですし、コッドマンの新製品導入やプロモーションに対して、他の事業部と比較して必要十分な投資がされているとは言えなかったと思います。
遠藤様:そうですね。コッドマンが培ってきたブランドとセールスチャネルにIntegraの魅力的な製品をのせる、ということです。結果的に日本ではビジネスを急成長させることができました。
コロナ禍の過去2年間を見てもIntegra全体で日本が一番伸びています。今後は中国も成長が加速してくると思いますが、我々日本も新製品をどんどん導入することによって、継続成長できるという見込みを立てています。
製薬企業事業部トップのオファーを断り、Integra立ち上げを選択
遠藤様:前職は医療機器分野で最も規模の大きい会社の一つで、30歳になったときに入社しました。営業を1年間、マーケティングを1年間経験してからマーケティングマネジャーに就任しました。成熟した大企業において短期間でいろいろな経験、勉強をさせて頂きました。
私は当時35歳で事業部長というキャリアプランを描いていたのですが、32歳でマーケティングの部門長になれた時には、「これはこのままいけるんじゃないかな」という思いもありました。
しかし、事業部の数には限りがありますし、事業部長は50代の方々で埋まってるという状況でプロモーションの機会がなく35歳になりました。このままおそらく5年間以上ここに留まって待つのか、飛び出して外で事業トップのポジションを手にするのか迷った結果、まだ35歳でもあったしリスクを取っても良いと思い、外で機会を探すことにしたのです。
結局、製薬メーカーの事業部長ポジションと、Integra Japanのまさにゼロからの立ち上げと、2つの選択肢が残りました。片やすでにできあがっている一つのビジネスユニットのトップ、片や全くゼロからの立ち上げです。そして結果的にゼロからのほうを取ったわけです。
遠藤様:オフィスも何もありません。社員は私が最初で、結局私の入社と同時に法人登記して、仕事場というと私の単身赴任のアパートから始まりましたから(笑) 経費精算もどうしていいやら、福利厚生なんかもってのほか、という状況でした。
遠藤様:実はビジネスをゼロから立ち上げるということに、すごく憧れがあったんです。前職の所属部門にまさにビジネスのゼロからの立ち上げを経験された方が多くいらっしゃいまして、大変な時を共に苦労した人たちの結びつき、一体感や、ここまでやってきたという自信が印象的でした。
いろいろ大変なことも経て、20年後、30年後に本当に笑いながら昔話をできるというのは多分こういうことを言うんだろうな、そういう仲間とはこの人たちのようなことを言うんだろうなと、すごく羨ましいと思ったんですよね。
そういう気持ちを持っていて、Integraを調べてみたところ、再生医療のテクノロジーを持ち、日本での成長余地がすごく大きい会社だと思ったのが入社を決断した理由です。
遠藤様:全くないですね。本当にゼロから事業計画を描いて、それを本社にプレゼンして投資を獲得し、実行していくことから始めました。今から思えばそういうステージを経験できたのは大変勉強になりました。
コッドマン事業買収時の感想は「とんでもない挑戦をする会社だな」
遠藤様:全社員でちょうど10人だったと思います。
遠藤様:まず、とんでもない挑戦をする会社だなと思いましたね(笑)
日本でいうと法人全体で10人のIntegraが、あんな立派なビルに入る大企業から一つのカンパニーを買収する。正気か??と思いました。ただ一方でとんでもないダイナミズムのある会社だな、とも思いました。
遠藤様:そうですね。よくビジネスでストレッチという言葉を使いますけれども、これ以上のストレッチはないぐらいですよね。
チャレンジとしては、既存の延長で描いていたビジネスにコッドマンを加えてどうやって最大化するかということが一つ目。
コッドマンのビジネスを支えるだけのオペレーションのインフラをどう早期に築き上げるのか、これが二つ目。三つ目はやはり心情的なところで、大企業で働きたいからこそコッドマンにいたメンバーが、聞いたこともないIntegraという会社に入ってくる。どうすれば無理強いすることなく会社への愛着と仕事へのモチベーションを持ってもらえるのか?ということですね。
遠藤様:まず、コッドマンといえばやはり水頭症シャントで、その領域では営業の専門性も見事でした。しかしこの水頭症のスペシャリストからコラーゲン使用吸収性人工硬膜や超音波手術器が使用される脳腫瘍や血管の開頭術のスペシャリストにもなってもらうというのが組織開発、また全体戦略の要でしたし、それは今でもそうです。
戦略をゼロから作り直して、トレーニングを実施し、現場でプロモーションを繰り返すということを実直に今でも繰り返しています。
遠藤様:これらも大変でした。二つ目の物流のオペレーションや、製造販売業にかかる体制構築の部分ですが、これらの分野は、やはり餅は餅屋にということで、それぞれの領域で立ち上げ経験があるリーダーを採用して任せました。市場を混乱させることなく事業移管が計画通りに終わったというのは、ひとえにそういった社員たちがしっかり結果を出してくれたからです。
Codman出身社員との距離が縮まったKick Off Meeting
遠藤様:三つ目の人の心情に関わるところですが、買収発表のあと、従業員説明会へ私が行って説明した時はもうけんもほろろなわけです。そこから始まって、いろんな紆余曲折や感情的なぶつかりがある中で、コッドマンとIntegra Japanの距離が少し縮まった、と実感したのは最初のキックオフミーティングでした。
そこでIntegra Japanとして今後導入予定の製品、超音波手術器やコラーゲン使用吸収性人工硬膜の説明をして実際に触ってもらったんですね。その時に、自分たちはこういう画期的な製品を近い将来販売できるんだ、とコッドマンメンバーのIntegraに対する認識や感情が変わったのを、私はその場で感じました。結構面白いんじゃない?と。それが一番の転換期だったと思いますね。
もうひとつ、10人しかいないこんな小さな会社が、自分たちのためにここまで準備してやってくれた、というところに心を動かされたっていうのは、何人かのメンバーから後に聞きました。
遠藤様:こちらこそありがとうございました。社員のインタビュー、読むのを楽しみにしています。
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