注目企業特集:エレクタ株式会社 代表取締役社長 木村元彦様 インタビュー

エレクタ株式会社社長木村様インタビュー
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顧問 松本英嗣

医療業界専門エージェント、JCLコンサルティングの顧問。医療機器業界で営業、マーケティングを経験した後、JCLコンサルティングを2005年に設立し現在に至る。

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Interviewee:
エレクタ株式会社 代表取締役社長
木村元彦 様

【ご経歴】大阪府出身。アメリカの大学を卒業後、1996年ガンマナイフのマーケティングスペシャリストとしてエレクタ株式会社の前身であるエレクタマンソン社に新卒として入社。

その後、国内マーケティング及びセールス・マーケティング統括、APAC regionの立ち上げに伴いアジアにおけるNeuroscienceマーケティング及びセールス統括、グローバルプロジェクト発足時にNeuroscienceマーケティング及びセールス統括、2019年より副社長を経て、2022年10月より現職。

定位脳放射線治療から始まり、全身のがんの放射線治療へ

松本:木村様、本日はよろしくお願いいたします。まずはエレクタ社の沿革、概要についてグローバル、日本それぞれについてお聞かせ頂けますでしょうか?

エレクタ株式会社社長インタビュー

木村様:よろしくお願いします。エレクタは1972年にスウェーデンのストックホルムで、定位脳手術定位脳手術は最小限の侵襲で脳内にあるターゲットの位置を決定特定し、治療を行う方法です。診断・治療の双方で用いられています。(エレクタ社HPより)に使用する医療機器を開発・販売する会社として、脳外科医のラーズ・レクセル教授により設立されました。

その定位脳手術から、次にはいかに低侵襲で頭の中の治療をするか、つまりは外科的手術をしないで治療するかという考えのもと、放射線治療と外科的治療の組み合わせとなる「定位脳放射線治療」機器の開発が進みます。

放射線治療とは、がん細胞が正常細胞に比べ放射線に弱いことを利用し、病巣部に放射線を照射することでがんを治療するもので、外科的手術療法、薬物療法と並びがん治療の3本柱の1つです。

当時、今から比べるとアバウトに放射線が当たっていたものを、ターゲットの脳腫瘍にピンポイントに当てることを技術的に可能にした「レクセルガンマナイフ」の1号機が、1968年にスウェーデン・カロリンスカ大学 脳神経外科のラーズ・レクセル教授によって開発されました。

日本にも治験を目的に、1990年に東京大学にガンマナイフ第1号機が導入されています。

1994年にはエレクタマンソンという合弁会社が神戸市にてスタートしました。それ以来30年近く日本で事業展開させて頂いています。

 

松本:以降、エレクタ社は頭部のみならず全身のがんに対する放射線治療にまで領域を拡げられていらっしゃいますね。

木村様:1997年、エレクタはフィリップス社の放射線治療部門を買収しました。おっしゃる通り、頭部だけではなくて全身のがんにも対応し、放射線治療をワンストップでお客様へ提供することが目的でした。

私はエレクタマンソン社設立の2年後1996年に入社しましたが、当時日本の社員は30名程度でした。その後、製品ラインアップの拡充もあり現在は約150名にまで増えています。エレクタのグローバルでは現在、約4700名が在籍しています。

 

松本:ありがとうございます。次にエレクタ株式会社の組織について、まずはコマーシャル部門についてお聞かせ頂けますでしょうか。

木村様:コマーシャル部門ですが、まず営業部門はオンコロジー営業部とニューロサイエンス営業部の2つに分かれています。

マーケティング部門は、全体のマーケティング戦略のもと、展示会/セミナー、カタログ作成等のPR業務や、患者さん放射線治療についての啓蒙活動などにも関わります。

定位放射線治療機器「Elekta Esprit」

定位放射線治療機器「Elekta Esprit」
(写真提供:エレクタ株式会社)

そして製品戦略や技術営業を担当するビジネスラインと呼ばれる製品部門があり、5つで構成されています。
①脳腫瘍や脳の機能的疾患に対する治療に使用される放射線治療機器 ガンマナイフや定位脳手術製品を取り扱うニューロサイエンス部門
②乳がん、肺がん、子宮頸がん等、全身のがんに対する放射線治療に使用されるリニアックを取り扱うオンコロジー部門
③最新機種であるリニアック(放射線治療機器)と高磁場MRIを一体化させたUnityを取り扱うMRLinacMRIで腫瘍の様子を確認しながら放射線治療が行える機器。近接する正常組織の被ばくを避け、精度の高い治療を実現する。部門
④放射線治療用計画装置やオンコロジーインフォメーションシステムを取り扱うオンコロジーソフトウェア部門
⑤小線源治療を取り扱うブラキセラピー部門 です。

 

松本:フィールドサービスを始めとするその他の部門については如何でしょうか?

木村様:社員の過半数を占めるCS(Customer Service)部門は、機器の設置から設置後のサポート、保守契約、部品の販売、アップグレード等を行っています。

また、製品設置前のプロジェクトマネジメントを行うOF(Order Fulfillment)部門や、もちろん薬事・品質管理、その他バックオフィスの部門で構成されています。

強みは放射線治療全体をカバーする幅広いポートフォリオ

松本:各部門のご説明ありがとうございます。次に、エレクタ社が事業を展開されている「放射線治療」の領域について、治療の特徴や利点について教えて頂けますでしょうか?

木村様:放射線治療の利点は、何と言っても「切らずに済む」点です。通院での治療が可能になりますので、仕事や家庭生活の両立ができるのが最も大きな利点だと思います。
もう1つは、薬物療法と併用ができる点ですね。抗がん剤治療をしながら、放射線治療を行っていくこともできます。

 

松本:ありがとうございます。次に放射線治療機器の市場についてお聞かせ頂けますでしょうか?

木村様:日本における放射線治療のマーケットは成熟していると言えます。今後はさらに高度な放射線治療のニーズにあわせて、例えばエレクタのMRリニアックのように、より高精度な治療を実現できる機種が既存の機種に置き換わっていくというケースが多くなると思います。

 

松本:放射線治療市場におけるエレクタ社の強みや特徴は何でしょうか?

MRリニアックシステム「Elekta Unity」

MRリニアックシステム「Elekta Unity」
(写真提供:エレクタ株式会社)

木村様:エレクタの強みは、放射線治療全体をカバーする幅広いポートフォリオを有しているということです。

例えば、汎用型リニアックや小線源治療、また治療計画装置及びソフトウェア製品だけではなく、MRリニアックやガンマナイフといったハイエンド治療機器など、お客様のあらゆるニーズに対応可能な幅広い製品ラインナップを有しています。病院内の放射線治療をすべて当社の製品に統一し、日々治療に当たっているご施設も多くあります。

また、日本ではキヤノンメディカルシステムズ社と、グローバルではGEヘルスケア社やフィリップ社ともパートナーシップを締結しています。エレクタの放射線治療機器だけではなく、彼らの画像診断装置等もパートナーの製品として提案できるということです。

社員には様々な経験ができる機会を提供したい

松本:ありがとうございます。これまでエレクタ社についてお話を伺ってきましたが、木村様がエレクタ社に入社されたきっかけや理由をお聞かせ頂けますか?

木村様:アメリカの大学を卒業後、起業などを経て帰国し、就職先を探していた時にエレクタ社よりお声がけを頂きました。そのときまず医療業界で働くということに非常に魅力を感じましたね。
自分たちの仕事の向こうには患者さんがいて、人の命に関わる仕事ができる、患者さんに真摯に向き合うことで社会への貢献を実感できる、という事が素晴らしいと感じました。

当時、エレクタは小規模ながら先進的な製品開発をして、ガンマナイフという唯一無二の製品を生み出していました。
そして私が入社した1996年は日本でガンマナイフ治療が保険適用されて、ちょうどこれからビジネスを拡大するというタイミングでした。そのマーケティングを任せてもらえるということでしたので、アメリカで勉強してきたことを魅力的な医療業界で、そしてエレクタで実践できる、と思い入社しました。

 

松本:その後、木村様はエレクタ社において現在で27年間勤務し、日本だけではなくアジア・パシフィックやグローバルを含めた様々なポジションをご経験され、昨年社長に就任されたとお聞きしています。

エレクタ株式会社 木村様インタビュー

木村様:そうですね。実に様々な機会を与えて頂いたと思います。

エレクタの中でも専門職で入社して、退職するまで同じ道でスペシャリストとしてキャリアを築かれる方ももちろんいらっしゃいます。しかし私は、自身もそうであったので、いろいろな経験ができる機会を提供したいと思っています。

例えば、入社以来10年間アプリケーションエンジニアをされていた方に、マーケティングで製品担当をして頂いたり、製品担当でマーケットや製品の理解を深めて頂いた方に営業を経験して頂いたケースもありますね。コマーシャル部門以外でも複数の職種を経験して頂くケースがあります。

誰でもいつでもそういった経験ができるかというと難しいですが、本人の希望と会社のニーズがマッチしていれば機会はあります。年に1回の業績目標設定時にはキャリアパスの希望を出すことができ、会社や各々の上司とも情報を共有しています。また、ポジションによっては社内公募も実施しています。

自由な社風、社員が手を挙げて参加するプロジェクト

松本:ありがとうございます。次に働き方その他についてお伺いしたいのですが、コロナ禍ではリモートワークを導入した企業が多くありました。様々な規制がほぼ終了した昨今、企業によって対応は様々ですが、エレクタ社は如何でしょうか?

木村様:営業やフィールドサービスで社外に出る方は基本的に以前から直行直帰でしたので、コロナ禍でもあまり変化はなかったですね。
マーケティングも含めて社内のバックオフィスは、コロナ禍の最中は100%在宅勤務でしたが、コロナ後の現在は最低週3日の出勤で、あとの2日間は在宅勤務でも可能としています。但し、オフィスでお互いにコミュニケーションを取りながら仕事を効率的に行う大切さも認識しており、今後は少しずつ出社日を増やしていくつもりです。

 

松本:近年、各企業でダイバーシティを強く推進しようとする動きがありますが、その点はいかがですか?

木村様:エレクタはスウェーデンの会社なので、本社では女性のシニアマネージメントもかなり多くいます。

日本ではシニアマネージメントレベルでの登用はこれからですが、中間管理職では、積極的に女性を登用していこうというところです。あくまでも実力を評価するスタンスであり、男性じゃないとダメ、という環境ではないということですね。

 

松本:木村様はエレクタの「社風」をどのように捉えていらっしゃいますか?

木村様:私が27年間勤務してきて感じるのは「自由度が高い」という事ですね。社風にしてもそうですし、仕事の中身にしても、個々の社員がやりたい、やらないといけないと思うことは、上司、部門とシェアをした上で採用されることも多いですし、個人の裁量も比較的大きいと思います。型にはまったような職場ではないと感じますね。

 

松本:個人の裁量のお話が出ましたが、個人間、部門間を含め社内のチームワークについてはどのようにお考えですか?

木村様:社員同士だけでなく、社内各部門が協力して仕事を進めていくことが多々ありますから、チームワークは非常に重要だと思います。今もまさに社員や部門間での多種多様な連携を推進しているところです。

縦割り組織の弊害をなくすために、グローバルでは年に一度の従業員アンケートを実施して問題点の把握、解決を図っています。
日本では経営戦略室を発足させ、全社から自主的に手を挙げて参画して頂いた方々が、組織として掲げている目標達成や課題解決のための複数の企画やプロジェクトを推進しています。例えば、社員間のエンゲージメント向上、顧客満足度の改善、事業改善などですね。

 

松本:それは素晴らしいですね。その経営戦略室の試みはいつからですか?

木村様:昨年からです。私が社長に就任する前から課題と感じていたことを含めて、社員の皆さんに会社をより良くするため取り組んで頂いています。
また、そういった試みと合わせて、2023年4月にオフィスを全面リノベーションしました。

エレクタ株式会社まず、2つの階にまたがっていたオフィスを1つの階に集約し、すべての個人デスクもフリーアドレスのデスクとなり、日々違う席に座って業務を行い、積極的にコミュニケーションを図って頂いています。

さらに社員間のコミュニケーションを促進するため新たにカフェテリアのスペースを作りました。そこでドリンクのサービスも提供して、皆さんでランチや休憩をしながら交流をして頂いています。

あとは来客スペースや大中小の会議室、お客様が来社してトレーニングを受講いただけるトレーニングセンターも設けています。また「エレクタスタジオ」という専用のスタジオもあり、そこからwebinarの配信や収録を行っています。

「自分たちの仕事の先にいる方々」を想える人に来てほしい

松本:会社を改善していこうという試みが実際に形になっているという事ですね。さて、インタビューも終盤となりますが、エレクタ社は、日本・グローバルにおいてどういった展望を持ち、どのように進んでいこうとされているのでしょうか?

木村様:エレクタのミッションは「世界中に放射線治療を普及させること」です。その背景には、「全世界のがん患者さんが最先端かつ最善の治療を受けられるように」という想いがあります。
グローバルな視点で見ると、日本のような成熟した国もありますが、アフリカのように、まだまだこれからな国もあります。そういった国々においては機器の設置・導入だけではなく、それを操作する方たちの教育も含めて推進して行こうと考えています。

日本では、リニアック自体はかなりの数がすでに導入されていますし、世界最先端の治療を行っています。ですので、今後は放射線治療自体をいかに患者さんに知っていただき、普及させるかということをミッションと捉えています。

欧米では過半数以上のがん患者さんが放射線治療を第一選択にされていますが、日本では外科的手術がまだまだ主流になっています。
しかし、患者ご自身やご家族が治療についての情報をより集めやすい環境になってきており、低侵襲的な放射線治療を求める方も増えています。私たちも治療のメリットをアピールし、受診率を増やしていきながら、新しい機器の入れ替えを促進していこうと思っています。

 

松本:ありがとうございます。最後に、エレクタに入社して頂きたいのはどういう方でしょうか?

木村様:エレクタは医療機器メーカーですが、入社時に必ずしも医療業界の経験が必要ではありません。それよりも自分たちの仕事の先にいる方々、医療業界では患者さんですが、そういった方々のために仕事をするという想いを抱いて業務にあたることができる人に来て頂きたいですね。

 

松本:本日は貴重なお話をありがとうございました。

木村様:ありがとうございました。

 

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