医療機器業界ブログ トップセールスに聞く。withコロナ、afterコロナの医療機器営業 前編 ~メール出禁に注意?~

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代表 井口貴博

医療業界専門エージェント、JCLコンサルティングの代表。医療機器の業界経験は20年以上。前職では外資系医療機器メーカーの立ち上げ時期に参画し、最終的には営業本部長を務める。

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さて、2020年初めから猛威をふるい、医療機器業界にも大きな影響を与えた新型コロナウィルス感染症ですが、今後、医療機器業界の営業スタイルを大きく変えるきっかけになりそうです。

そこで、コロナ禍における営業活動の現状と今後について、大手医療機器メーカーで営業経験15年以上、トップセールスとして活躍するHさんに、代表の井口がお話を伺いました。

 

 

 

オペの立ち会いは減少。さらに、いわゆる”顔出し営業”はNGの傾向に

 

井口:2020年、新型コロナウィルスの蔓延開始から緊急事態宣言となり、医療機器メーカーにも多大な影響が出ていると思いますが、実際に新型コロナウィルス蔓延前と比較してビジネスの状況は如何ですか?

 

Hさん:まず私たちの領域でお話しますと、6月が底辺でしたね。7月以降は少しずつ復調し、ようやく11月現在ではコロナ前の85%程度まで回復しています。透析関連はコロナの影響を受けず堅調に推移していました。全体的には、慢性疾患や代替治療法が確立されているものは手術を先延ばししている傾向が強かったです。

 

井口:そうでしたか。透析関連の症例はやはり、直接生命に関わるから影響を受けなかったのでしょうか?

 

Hさん:そのとおりですね。背景は透析患者さんの生命線である、血管の管理の重要度ですね。また、全体的に症例数が減ったのは、病院が待機症例を自粛する事と同時に、通院を拒む患者さん側の意向も強く影響したと思います。

 

井口:訪問や、オペの適正使用のための立ち会いについてですが、変化はありましたか?

 

Hさん:まず訪問については規制されるケースが多かったです。結果としてかなりオペの立ち会いも減りました。また、明確なアポイントが無ければドクターと面談をしにくくなりました。訪問規制が強くなったことで、メーカー営業として一般的に行われる、いわゆる「顔出し営業」の訪問は実施が難しくなっています。

 

井口:やはり、病院としても最大の防御策として、できるだけ訪問は規制されていたのですね。顔だし営業ができないと若手営業や、戦略的に売上を作れていない人は厳しいでしょうね。

 

Hさん:そうですね。顔出し営業ができないと、本当の意味で自社製品を利用するメリットをドクターに理解してもらっていない営業は厳しいでしょうね・・・。

 

メールではこれまで以上に繊細で丁寧なコミュニケーションが必要。”メール出禁”に注意!

 

井口:さて、そのような状況下で、Hさん自身の営業の方法はどのように変わりましたか?

Hさん:コロナ禍において、切り口を変えた最善の営業手法を模索し始めました。まずは、訪問できない状況下ではメールによる情報提供が効率的だと考え、顧客のメールアドレスの収集に努めました。

 

井口:キーマンとなるドクターのアドレスは当然すでに知っていると思いますが、若手のドクターや技師さんなどは、会った際に話すだけの方も多いですからね。

 

Hさんですね、アドレス収集は、逆にキードクター以外の方との距離を縮めることができた良いきっかけでした。

 

井口:メールでの情報提供は、あまり今まで行っていなかったと思いますが、色々と気を付けることはあったのですか?

 

Hさん:もともと、あまり文章で伝えることが得意ではなかったので、非常に気を使いました。特に気を付けていたのは、相手が知りたいことにフォーカスして簡潔な内容にすること、あとは送信のタイミング、でした。

結局、メールによるコミュニケーションでも重要なのは「顧客のニーズをつかんでいること」です。ニーズにマッチした有益な情報を提供していれば顧客とメールでのやり取りが続きますので、メーカー担当として印象付けをすることができます。

最終目的は、自社製品の使用推進ですので、メールでもドクターに印象付けができると、製品使用に繋がると思いますね。

 

井口:これまでにニーズを掴めている顧客ならそれをベースにコミュニケーションを展開していけばよいですが、つかめていない顧客に対してはどうすればいいですか?

 

Hさん:対面訪問の場合は、訪問でよもやま話も含めて会話をしながら顧客の本心、ニーズを探ることができました。しかし今後は「限られた時間のWEB面談やメールによるやり取りの中で、いかに顧客のニーズをつかむか」、が医療機器営業にとって重要になってくると思います。

 

例えばある内容でメールを送ったとしたら、その返信がくるか来ないか、来たとしたらその返信内容によって「そもそも自分はニーズを掴めているのか?」の判断をし、新たな内容で「ニーズそのもの」を探っていかなくてはなりません。対面以上に繊細で丁寧なやり取りとリサーチ、医療機器営業の能力としては洞察力や想像力がより必要になってくると思います。

 

井口:なるほど。また、送信のタイミングというのは、たしかに私も医療機器の営業時代は気にしていました。以前の私のチームにいた優秀なセールスは、相手のドクターが医局で落ち着いて仕事をしている時間を狙ってメールしていましたね。

 

Hさん:そうなんです、タイミングによっては流されますし、スマホの時代では以前の様にPCを立ち上げて、さあメールを見るぞ!ということはなくなり、夜中でも届いたメールを見てしまいますからね。顧客のNGな時間帯にメールを送ってしまい、しかもそれがニーズを掴んでいない内容だと、「もうメールしてこないでくれ」=「メール出禁」になることが結構ありますよ!

 

井口:メール出禁ですか・・・。たしかに私も仕事柄メールが多いですが、返信がない方いますね・・・、気を付けます。そのほか、コロナ禍において新しく始めた営業手法などありますか?

 

Hさん:そうですね。例えば著名な医師やインフルエンサーとなる医師の考え方をダイレクトに届ける方法を模索した結果、Web形式の講演会に着手しました。例えば、自社製品を使用した症例をもとに、ドクターから手技の説明や、トピックとなっているエビデンスなどを紹介していただくものです。重要視したのは、ドクターへ提供する情報の差別化でしたので、高いクオリティの情報を届けることに注力しました。

 

井口:企画を成功する為に意識したことなどはありますか?

 

Hさん:「取り組みから導入までのスピード」、「提供する情報の質」ですね。スピードという意味では、先ほどのWeb講演会等は、他社に先駆けて実施しました。他社が行う前に複数回実施することで、参加顧客からのFeedbackをたくさん得られ、それにより顧客の求めている企画をさらに考え、実行に繋げています。」

井口:昔からHさんは、新しい動きが早かったですからね。

 

Hさん:そうですか? (笑) 一方、Webコンテンツだけに頼らず、訪問できる顧客へは面談機会を率先して作り、定期訪問を実行しました。競合他社は訪問規制を受けて活動を自粛するケースが増えている中で、自分と関係の深い顧客との更なる関係強化ができましたね。

 

井口:相手のやらないことをやり、強みをさらに伸ばして、競合と差を広げたということですね。

 

次回へ続く:トップセールスに聞く。withコロナ、afterコロナの医療機器営業 後編 ~セールスの評価軸が変わる?~

 

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